大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)2096号 判決

原告

藤田甚平

代理人

黒田隆雄

被告

堀切運輸株式会社

代理人

伊藤末次郎

訴訟被告知人

千代田火災海上保険株式会社

第一、主文

一、被告は原告に対し金八五九、六二五円およびこれに対する昭和四三年三月一五日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二、原告その余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は三分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四、この判決一項は仮に執行することができる。

第二、本訴請求

「被告は原告に対し金四、七一九、四一四円およびこれに対す訴訟送達の翌日である昭和四三年三月一五日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」

第三、争いない事実

一、傷害自動車事故発生

とき、  昭和四〇年七月二〇日午後六時頃

ところ、 千葉県松戸市小山三三二先水戸街道葛飾橋上(アスファルト舗装)

事故車、 被告所有の貨物自動車、足一い七四九〇号

運転者、 被告の従業員高橋豊三郎(当時二三才)

受傷者、 原告(原付自転車ホンダカブ五〇cc荒川区い四五二四号運転中)大正三年七月二八日生当時五〇才

態様、  事故車は東京方面に向つて西進中、同方向に進行中の原告車と接触、ために原告は受傷した。

二、責任原因について

被告は貨物運送業を営み本件事故車の運行供用者である。

三、損害の填補

原告は強制保険金五六万円の給付を受け、本件事故による損害に填補した。

第四、争点

一、原告の主張

(一) 責任原因

被告は自賠法三条により本件事故により生じた原告の損害を賠償しなければならない。

(二) 損害の発生

1 傷害の内容

頭部外傷、外傷性右内耳障害、両下肢痙性麻痺による歩行障害

2 損害の数額

(1) 医療費

金四一九、二五〇円

原告は昭和四〇年七月二〇日から同年一一月一一日まで一一五日間斉藤外科医院に入院、その費用として右金員を要した。

(2) 逸失利益

金二、八六〇、一六四円

原告は大工職人で一ケ月二五日稼働して金五五、〇〇〇円の収入があつたところ、大工道具の修理など月五、〇〇〇円の費用を差引くと月金五万円の純益を得ていた。ところで原告は当時五〇才の健康な男子であつたから平均余命の範囲内で六〇才までの一〇年間は就労可能で年六〇万円の収益をあげてゆくことができた筈である。しかるに原告は本件事故により労働能力の六割を失い、一ケ年あたり金三六万円の得べかりし利益を失つた。従つて右十年間の逸失利益の総計の事故時における現価を年五分の割合による中間利息控除のホフマン式計算によつて算出すると右金額となる。

360,000×79,449=2,860,164

(3) 慰藉料

金二、〇〇〇、〇〇〇円

本件受傷、障害治療の程度、三五年間大工職人として妻と四人の子の平穏な生活を享受していたところ、本件事故によりその生活もやぶられたことを考えると、右金額が相当である。

二、被告の主張

本件事故について被告方事故車の運転者高橋に全く過失は存しない。つぎのように原告の過失によつて惹起された事故であり、従つて被告は責任を負うべくもない。仮に何らかの責任があるとするも原告の過失は重大で、過失相殺が適用されねばならない事案である。

すなわち高橋が橋上に差しかかる直前信号機の赤により停止したが、原告は事故車のバックミラーに映る範囲内にはきていなかつた。ところが信号が青になつたので事故車が静かに前進をはじめて約三〇メートル位進行したとき、突然原告の原付車が後方から事故車と橋の欄干との間に入りこみ、原告は誤つて欄干および事故車に接触したものである。従つて事故が原告車に接触したものではない。高橋はふらふらしながら割り込んできた原告をバックミラーで発見するや直ちに急ブレーキをかけ、急停車の措置をとつている。

第五、争点に対する判断

一責任原因

本件事故は事故車の後部左側車輪と原告の原付右ハンドルが接触したためのものとは認められるが、そこにいたる双方の態様は明確には把握しがたい。ただ事故車の運転者高橋も、助手小野寺も接触直前まで原告車の存在にも気づいておらず、事故原票の記載や当時の取調警察官小川の記憶によると、既に原告車が併進中のところに事故車が気づかず、対向車両の動向に気をとられて車両を左によせたため接触したものとの疑いもないではなく、これを否定する目撃者ないし物的な証拠も存しない。(原告車が事故車と橋の欄干の間に割込みをはかつた無理によつて接触したともただちに認められない。)従つて自賠法三条の免責事由は成りたたず、被告は運行供用者として原告の損害を賠償しなければならない。

<資料―略>

二原告の損害

1 傷害の内容

原告の主張のとおり認められる(第四の一の(二)の1)。

2 損害の数額

(1) 医療費 金四一九、二五〇円

原告主張のとおり認められる(第四の一の(二)の2の(1))。

(2) 逸失利益

金一、四二〇、〇〇〇円

原告は事故時まで大工職として費用を差引き月五万、年間六〇万円の純収益を得ていた。しかるに本件受傷による歩行障害、右耳難聴などにより生涯三〇%の収益能力を失つたものとすべきである。ところで原告は当時五〇才であつたから平均余命の範囲内で少くとも六〇才まで一〇年間就労可能であつたものとすべきであるからその間の右割合による逸失利益の総計の事故時の現価をホフマン式(年五分の割合による中間利息控除)計算によつて算出すると右金額となる(千以下切捨)。

600,000×0.3×7.9

(3) 慰藉料

金一、〇〇〇、〇〇〇円

入院一一五日の後も約二年間にわたつてマッサージ、耳鼻科、脳神経外科などに通院治療の要した経過、症状などを考慮すると、右金額が相当である。

(4) 損害合計

金二、八三九、二五〇円

<資料―略>

三過失相殺

一項で述べたように事故直前の双方の態様は必ずしも明確ではないが、少くとも接触箇所などから、原告車が追抜いたものとは認められず、原告に少くとも橋梁上の幅員7.2メートルの比較的狭い道路上の進行に際し、同方向車両に対する注意を十分につくさなかつた過失が認められ、事案の性質から賠償額につき五〇%を過失相殺すべき事案と考える。

そうすると前項認定の損害総額の五〇%、一、四一九、六二五円を被告が負担しなければならない。

<資料―略>

四結論

右要賠償額から既に填補された強制保険金五六〇、〇〇〇円を差引くと、被告の未済額は金八五九、六二五円となるから原告の請求は主文の限度で認容すべきである。

訴訟費用につき民訴法第九二条、仮執行宣言に関し同第一九六条を適用した。

(舟本信光)

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